■先週末金曜日(2月6日)に、毎月恒例の米国雇用統計が発表となりました。
結果は、米国1月の失業率が1992年以来で最高水準に上昇(7.6%)、非農業無門就業者数も事前の市場予想比大幅に膨らむなど雇用市場の一段の悪化が示されました。
しかし、結果は皆様ご覧の通り、ドル円上昇、ユーロドル上昇、ユーロ円その他のクロス円相場も上昇となりました。
そして、案の定、市場から聞こえてきたのは、「悪材料出尽くし感」でした。
弱い経済指標が発表になって相場が下がれば、指標内容の結果に従った動きであると見なされる一方で、弱い経済指標にも関わらず相場が上昇すれば、材料出尽くし感という、非常に便利な「常套文句」があるという感じです。
私は、相場の世界に初めて足を踏み入れた1984年8月、そして、実際にトレーダーになった1984年12月の頃に、まず驚いたのは、経済指標の内容そのものより、あくまで事前の予想比どうであったかということでした。
かなり悪い数値でも予想比それほど悪くなければ相場は上昇するわけです。
しかし、そのような判断だけでも相場には付いていけないことが分かりました。
それは、事前の予想比悪くても相場が上昇するケース、事前の予想比良くても相場が下落するケースに遭遇したからです。
その当時、私は疑問を晴らすべく、ディーリングルームの先輩達に聞いたところ、「事前の予想比悪くても売られないから逆に上昇するんだよ」という返事が返ってきました。
確かにその通りだと思いました。
それまでに市場にポジションが積み上がっているから、少々市場予想比悪くても、底固いと判断する市場参加者が多ければ、ショートカバーを背景に相場が上昇するという理屈でした。
まったく異論はありませんし、小学生でも考えればすぐに分かる程度のこととも言えましょう。
だからこそ、終わった相場に対しては、誰でも、如何ようにでも解説を付けることが出来るわけです。
世の中に氾濫している相場コメントもこの類のものが大半です。
しかし、現実問題として、幾ら、事前に経済指標の数値を分析予測したところで、それを実際のトレードに生かせるかどうかは全く別問題だという、当り前の課題に直面したのです。
それでは、一体全体どうすれば相場の波に乗ってトレード出来るのかとなると、やはり頼れるのはチャートしかないという結論に、私は辿りついたわけです。
■さて、現実問題、ファンダメンタルズ分析では勝てないと思っても、いざ、テクニカル分析に頼るとしても、並大抵の分析では歯が立たないと言えましょう。
しかも、デイトレードの場合は、瞬時に判断しなければならないのです。
特に重要経済指標などで相場が大きく動く場合などでは、シンプルな分析であることが求められます。
当り前のことですが、ゆったりとした時間を掛けての分析では間に合わないのです。
私が、実際のトレードで役に立つ分析手法の開発に時間を要したのは、全て上記のことが理由です。
「スパンモデル」「スーパーボリンジャー」がその産物であることは言うまでもありません。
■それでは、いつものように、今回も、実践的な相場分析を行ってみたいと思います。
こちらの無料メルマガでは、ドル円相場に関する分析に焦点を当てて、ご紹介したいと思います。
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■さて、私は、相場に入っていくに際して、まずは中長期の相場観を持つように心がけています。
この中長期の相場観は、主に時間分析に従って構築します。
ドル円相場が、過去6年来の高値である124.14円を2007年6月に付けて以降、先月時点で20か月経過したわけですが、過去9年程度、18週から20週程度でのタイムサイクルが存在しており、1月時点で、時間の節目に到達したと判断出来る点は、前回号でもレポートさせて頂いた通りです。
さらに、1998年8月から1999年11月にかけてのドル円相場と、2007年6月から2009年1月にかけての相場展開が非常に似ている点もお伝えしました。
1番底安値108.21円を付けた1999年1月から2番底101.25円を付けた1999年11月まで11か月要したのに対し、安値95.77円を付けた2008年3月から安値87.10円を付けた2009年1月まで同じく11か月でした。
そして、108.21円を付けて以降の戻り高値は1999年5月124.75円であり、この124.75円から大底101.25円までの下げ幅は23.50円でした。
一方、95.77円を付けて以降の戻り高値は2008年8月110.67円であり、この110.67円から1月の安値87.10円までの下げ幅は23.57円でした。
23.50円と23.57円、その差はたったの7銭だけであったことを単なる偶然と見なすかどうかは見解の分かれるところかもしれません。
しかし、私は、相場の世界のルールの一つが現れているだけだと考えています。
■もう少し、月足ベースの詳細な分析を行ってみましょう。
安値95.77円を付けた2008年3月から、戻り高値110.67円を付けた2008年8月までの時間は、6か月です。
そして、この2008年8月から先月1月までの時間は、同じく6か月です。
同じ6か月という時間で、上昇波動、そして、下落波動が見られます。
「対等時間」となっていることから、先月1月は「変化時間帯」であることが分かります。
価格の推移を見てみると、2008年8月以降の月足ローソク足の高値が毎月切り下がっているのが分かります。
前月の高値を上回ることなく、下げてきたわけです。
このように、相場波動を考える上でも、前月の高値、安値は充分に意識してみておく必要があります。
通常の下落相場であれば、前月(前週、前日等々)の高値を上回ることなく、切り下がっていきます。
同様に、通常の上昇相場であれば、前月(前週、前日等々)の安値を下回ることなく、切り上がっていきます。
今回、ドル円相場が先月の安値87.10円を底に上昇に転じた可能性が高いと読んでいますが、その場合、前月の高値を越えていくものと想定されます。
その前月である1月の高値は、94.65円です。
1月6日という、新年明けて間もないタイミングで付けた価格です。
■続いて、日足時間分析を行ってみましょう。
まず、注目すべき価格である安値87.10円を付けた日である1月21日を中心点として分析することにします。
尚、時間分析というのは、いつの時点を分析のスタートとするかという判断が重要です。
さて、この1月21日からさかのぼること12日で、1月の戻り高値94.65円を付けた1月6日となります。
そして、この1月21日から現在の方向にカウントすると、高値92.25円を付けた2月5日となります。
12日の下落に対して、12日の上昇という格好であり、「対等時間」が見られるわけです。
対等時間は往々にして「変化時間帯」となります。
先週末金曜日の高値が92.22円と、先ほどの5日の高値91.25円に3銭足りなかったのは、相場の抵抗力が働いたからだと、私は考えます。
「対等時間」から生じた変化時間帯に付けた高値91.25円をブレイクさせまいとする、相場の力がドル円相場の上昇を抑えたと分析しています。
それ故、現時点では、2月5日の高値である91.25円は依然として当面の高値として抜けない可能性は残されています。
逆に言うと、今週(9-13日)、91.25円を上抜けると、一気にドル円相場が上昇する可能性が高まると読んでいます。
しかし、以下の判断理由から、依然として悩ましい相場が続く可能性はあります。
と言うのは、9日(月曜日)に上抜ける場合、安値87.10円を付けた1月21日から、14日目となります。
14日というタイムサイクルは、ここ最近のドル円相場で多発しているタイムサイクルであることが分かります。
すなわち、月曜日に91.25円を上抜けたからと言って、続伸する確率が決して大きく高まるとは言い切れない点が悩ましいのです。
そこで、この辺りの分析をさらに掘り下げるために、次に、日足スパンモデルを見てみたいと思います。
■日足スパンモデルを見て、すぐに注目されるのは、遅行スパンの位置です。
ご覧になって一瞬でお分かりになると思いますが、遅行スパンが実態ローソク足に沿って推移しています。
それから判断すると、遅行スパンは10日(火曜日)にかけて上昇、その後反落に転じる可能性を示唆していることが分かります。
従って、ドル円相場は、9日(月曜日)、10日(火曜日)と上昇圧力が高いものの、その後も続伸するかどうかは、足取りを見ながらの判断となります。
むしろ、可能性としては週央からドル反落するシナリオを頭に入れておく必要がありそうです。
尚、日足スーパーボリンジャーを見ると、実勢レベルがセンターラインである21日線、さらにはプラス1シグマラインを上回って推移しているのが分かります。
しかも、バンド幅が拡大に向かう傾向にあることを示唆しているようです。
今後、実勢レベルがNY終値でプラス1シグマラインを下回らない限りは、ドル上昇トレンドに入っていく可能性があります。
また、日足スーパーボリンジャーの遅行スパンの位置にも注目です。
すなわち、陽転しつつあることです。
センターラインの向きが上昇方向にある上で、遅行スパンが陽転するのは、昨年8月1日以来のこととなるだけに、非常に注目されるところです。
以上の分析から、どうも、今週初は、相場の転換点となるかもしれません。
ますます目が離せないドル円相場となりそうです。
以上です。