■先週も英国やユーロ圏の弱い経済指標に反応し易い相場地合いが続きました。
ポンドドル相場は、先々週に、23年ぶりの安値を付けた後、先週に入ってからは、5日連続陽線と、一方的に上昇となりました。
英国の経済指標が予想に比して良好であったこともさることながら、対ユーロでのポンド上昇も大きな要因となりました。
そのユーロですが、ユーロ圏の一連の経済指標の悪化と同時に、ユーロ圏各国間の経済格差の存在がクローズアップされていること、そして、ユーロ存続そのものが疑問視されるというネガティブセンチメントが蔓延しているようです。
また、著名投資家ジョージソロス氏もユーロに対して否定的な発言が聞こえた週でもありました。
一方、米ドルはというと、相変わらず楽観出来る状況ではなく、週末に発表になった昨年10-12月期のGDP速報値が1982年以来で最大のマイナス幅となったことなど、依然としてネガティブセンチメントが継続しています。
このように、世界各国どこを見ても、悪いニュースばかりのご時世ですが、私達が対象としている為替相場はというと、やはり羅針盤であるチャートに頼るしか手立てはなさそうです。
■それでは、いつものように、実践的な相場分析を行ってみたいと思います。
まず、1月相場が終了したことで、月足が完成したこともあり、大局観からの相場分析がより可能となりました。
ところで、比較的大きく動いたポンド円相場ですが、先週号でも申し上げた通り、2007年7月に251円台を付けた相場は、9か月要して192円台にまで下げ、その後5か月要して215円台まで戻し、その後は今月に至るまで下げ続けました。
結局、2007年7月の高値251円台から今月まで19か月経過したことになります。
ドル円相場が、過去6年来の高値である124.14円を2007年6月に付けて以降、今月で20か月経過したわけですが、このポンド円相場の下げに要した19か月にほぼ呼応する格好となっているのが分かります。
そして、同じく、先週号の繰り返しになりますが、ドル円相場が過去9年程度、18週から20週程度でのタイムサイクルが存在することから、今月時点で、時間の節目に到達したと判断出来ます。
週足ベースでの時間分析によると、ポンドドル、ポンド円は、戻り高値を付けた昨年7月20日の週から先々週(19-23日)で27週を経過、重要基本数値である「26」の近似値の時間を達成しましたが、先週の安値は、先々週の安値を上回っていることから、この27週と言う時間で一旦の底値を見たとの判断も出来そうです。
来週以降も、引き続き、先々週の安値が重要サポートとなりそうです。
■ところで、ドル円相場ですが、私の中長期的な相場観をご紹介したいと思います。
結論から申し上げると、1998年8月から1999年11月にかけてのドル円相場と、2007年6月から2009年1月にかけての相場展開が非常に似ていることです。
そして、この歴史的な検証が、今後の相場展開の予測に大いに役立つと考えられることです。
2007年6月の高値124.14円をピークにして下げてきたドル円相場を見て、私は1998年8月から1999年11月に掛けて下げた相場を思い出します。
1997年のアジア危機、その後の日本経済危機などを背景に、円安が大きく進み、1998年8月に高値147.64円を付けたドル円相場は、1998年8月のロシア経済危機(ロシア中銀の債務不履行やルーブル暴落)を契機に、LTCMを始めとする大手ヘッジファンドによるポジションの巻き戻しからの円買いにドル円相場は暴落しました。
当時は、私自身、銀行でのディーラーとして最前線で市場に参加していただけに、尋常でない市場の状況に目を覆うほどでした。
結局、ドル円相場は、高値147.64円から安値101.25円まで16か月要して、46円強下げたのです。
そのドル急落過程をもう少し詳しく見てみると、1998年8月から6か月要して108.21円まで下げ、その後5か月要して124.75円まで戻し、その後7か月要して101.25円まで下げたのです。
この時の月足チャートをご覧になりながら、お読み頂けると良くお分かりになるかと思います。
この下げに要した16か月の流れは、大きな規模の下げの後、中規模の戻し、そして大きな規模の下げというパターンでした。
■さて、続いて、今回のドル円相場の下げを見てみましょう。
2007年6月の高値124.14円から10か月要して95.77円まで下げ、その後6か月要して110.67円まで戻し、その後6か月要して87.10円まで下げました。
この下げに要した20か月の流れは、先ほどの1998年から1999年のケースと同様、大きな規模の下げの後、中規模の戻し、そして大きな規模の下げというパターンであったと言えそうです。
両方のケースともに、下げ、上げ、下げの3つの波動から成るN字波動です。
相場の波動には一方的に上げる、もしくは下げるI波動と、上げて下げる、もしくは下げて上げるV波動、そして、さきほどのN波動と3種類あります。
加えて、エリオット波動論の中で言われる、5波動と3波動があります。
5波動は、まさに、1波から始まって、5波に至る波動です。
一般に、明確なトレンドが出易い波動です。
一方で、3波動は概して修正局面に発生し易い波動です。
ただ、この3波動と言っても、長期で発生する場合は、相場の値幅が大きくなり、単なる修正局面という表現は的確ではないとも言えます。
要するに、あくまで大局観での相場波動の分析上での波動の種類分けと理解して下さい。
■それでは、もう少し、先ほどの1998年8月から1999年11月にかけてと、2007年6月から2009年1月に掛けてのドル円相場の動きを詳しく見てみたいと思います。
前回(1998-1999年)のドル下げ局面の1番底は、1999年1月の108.21円でした。
この108.21円を付けた1999年1月から大底101.25円を付けた1999年11月まで11か月でした。
そして、108.21円を付けて以降の戻り高値は1999年5月124.75円であり、この124.75円から大底101.25円までの下げ幅は23.50円でした。
一方、今回(2007-2009年)のドル下げ局面の1番底は、2008年3月の95.77円でした。
この95.77円を付けた2008年3月から安値87.10円を付けた2009年1月まで11か月でした。
そして、95.77円を付けて以降の戻り高値は2008年8月110.67円であり、この110.67円から1月の安値87.10円までの下げ幅は23.57円でした。
上記から、前回のドル円相場の下げ局面と、今回のそれとは非常に似通っていることが分かります。
すなわち、1番底から2番底までの時間が共に11か月であること、戻り高値から2番底までの下げの値幅が23.50円と23.57円とほぼ合致していることです。
あたかも相似形のようです。
このように、考察してくると、前回のドル円相場の下げの後の動きを今回の相場にも当てはめて考えることは可能と言えましょう。
もちろん、全く同じ動きをするわけではありませんが、相場の上げ下げのリズムとして、似た動きが今後展開されていく可能性はあります。
大雑把な相場観を許してもらえるならば、大きく動いた相場の後は、静かな相場がやってくるとも言えましょう。
「動」の後の「静」とも表現出来そうです。
結局、当面のドル円相場の相場観として、下がるようで下がらない、底固い相場展開となるのではないかと読んでいます。
ただ、一方的に戻す相場も考えにくく、上がったり、下がったりの往来相場が予想外に長く続く可能性もあります。
私の当初からのドル円に関する相場観は、1月は往来相場が続き、後半になって次第にトレンド性が出てくる、数か月単位でみて、1月の安値が当面の安値となり、ドルがじりじりと値を戻す、反転上昇するというものでした。
果たして、今後どう展開していくか、毎日の相場を分析しながら、チューンアップしていきたいと思います。
また、他の多くのクロス円相場(ユーロ円、ポンド円、豪ドル円等々)にも大きな影響を与えるドル円相場だけに、入念なチェックが必要のようです。
皆様には、どうぞ、私の毎日の相場観(時間分析を含めた会員限定コメント)をお読み頂いた上で、実際のトレードに生かして頂ければとお祈りしております。
以上です。